アンパンマンがお腹をすかせている人に、自分の顔を食べさせている理由が、作者の戦争体験からくる深い意味があったこと。
(何のために生まれて 何のために生きるのか)ときどき耳にしていた「それいけ!アンパンマン」のこの歌が、作者の真剣な問いかけだったこと。
これらのことから、やなせたかしさんという人を、もっと知りたくなった私は、いくつかの著書を読んでみる事にした。その中のひとつが「チリンの鈴」だった。あまりにも心にのこる話なだけに、やなせたかしさんが「チリンの鈴」で、何を伝えたかったのか?考察してみる事にした。


やなせたかしさんの「チリンの鈴」について
表紙には、一匹のかわいい羊の子どもが載っている。アンパンマンで見られる、やなせたかしの可愛い絵だ。やなせさんの絵は本当に可愛らしい。90歳で描かれたという「たそがれ詩集」に載っている絵も、90歳の人が描いたとは、思えないほど可愛らしい。
「チリンの鈴」を読んだ人のレビューを見ると、「怖かった」「強烈すぎて忘れられない」というような事を言っている人が多いが、この可愛らしい絵からは想像もつかない。
どんな話だろうと読んでいく。
(チリンの鈴でおもいだす やさしいまつげをほほえみを チリンの鈴でおもいだす この世のさびしさ また かなしみ)
何やら意味ありげな前書きではじまる。
子羊はもし谷底におちてもすぐわかるように、金色の鈴を首につけていた。子羊はチリンという名前がついた。
羊小屋が狼のウォーに襲われたとき、チリンは母親が盾になってかばってくれたおかげで助かった。
ここからもうすでに、子どもが読む絵本にしては悲しすぎる。
たぶん、世の中のほとんどの親は危機的な状況のとき、チリンの母親と同じ行動をするだろうなあ、とそんなことを考えた。
「なぜ、どうして、ぼくたちは殺されるんだ、なんにもしなかったのに」この時にチリンは弱いものはやられるという不条理な現実を知った。
やなせたかしは「チリンの鈴」で何を伝えたかったのか?
考察①
これは人間の世界でもおんなじで弱い子をいじめる、弱そうな国はやられる。兵役を経験した、やなせたかしだからこそわかる「戦争の残酷さ」を、「チリンの鈴」を通じて世の中に伝えたかったのではないか
その後、チリンは狼ウォーのところへ「弟子になりたい」と志願する。母親を殺した狼の顔を見るのは辛かっただろうに、一人でやってきて、下手すると食い殺されるかもしれないのに、よっぽどの決心だったのだろう。
狼のような強い動物になるために チリンは毎日けいこした。身体じゅう傷だらけになりながら、なん度も死にそこないながら。(羊のツノはかなり硬いらしいが、鍛えれば羊でも狼のように強くなるものだろうか、と話の本質から少しズレたことを考えてしまった)
そしてチリンは誰もが恐れる、チリンの母親は決して望まなかっであろう凶暴な殺し屋になった。
そして、長い年月を一緒に過ごしてきたウォーが死んでしまった。ようやく、ようやく母の仇をとったはずなのに、チリンの心は少しも晴れず悲しみでいっぱいだった。
嫌なことをされたら仕返しをしないと気が済まないと思う人もいるかも知れない。でも嫌な事をし返すと自分もその悪い人と同じ悪い人になってしまう。
考察②
仕返しをして一時的にスッキリしたとしても、それで本当に幸福が得られるのだろうか?そうではない。幸せにはなれないという事を、やなせたかしは「チリンの鈴」を通じて、伝えているのではないだろうか。
考察③
人を憎んではいけない、報復はいけないという事を学び、人の心の痛みに気づく事ができる人になって欲しい。そのため、やなせたかは子どもにも是非、読んでもらいたいと、「チリンの鈴」を絵本にし、そういう思いを伝えたのではないだろうか。
死んでいくウォーの言葉にも、チリンへの愛が感じられる。ウォーは、チリンのことを息子のように思っていたのでしょう。チリンもまた、いつしかウォーのことを父親のような存在に感じていたのかも知れない。母親を殺した憎いやつのはずなのに。
やなせたかしはチリンの鈴で何を伝えたかったのか?まとめ
名作「チリンの鈴」が、とても考えさせられるお話で興味深かったので、作者のやなせたかしが、読者に何を伝えたかったのか考えてみる事にしました。
母親が殺された時のチリンの「なぜ、どうしてぼくたちは殺されるんだ、なんにもしなかったのに」という言葉が、兵役を経験した、やなせたかしだからこそわかる戦争の残酷さを、伝えたかったのではないか。
弱いものがやられるという理不尽な状況というのは、少なからず現在の人間社会でもあるような気がします。
また、仕返しや憎しみからは幸福は得られないということ、人の心の痛みに気づける大人になって欲しい、という思いから、この話を子どもが読む絵本で伝えたのではないだろうか。というのが私個人の考察です。
人それぞれ価値観やものの見方は違いますから、ほかのサイトも見てみると色んな考察があって、面白いですね。
また、どんなに悪人でも心の奥には愛を持っているのではないか。本当に憎むべき人なんてこの世にはいないのかも知れない、人を憎んではいけない。そんな事にも気づかせてくれるようでした。
やなせたかしの熱いメッセージが込められたこの本は、子どもたちに是非たくさん読んでもらいたい絵本ですね。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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