どんなに辛い状況でも、すぐ隣には希望があります。子どもから大人まで多くの人に愛され続けるアンパンマン。作者やなせたかしさんが語る人生経験に基づいた哲学、絶望からの希望の見つけ方を綴った作品です。つらい時、苦しい時に希望をくれる一冊です。
この本をおすすめしたい人
- 人生につまづいた人
- 困難な状況で絶望している人
- 今辛い状況にある人
- 夢を諦めそうになっている人
- 毎日を大切に生きたいと思っている人
- アンパンマンが好きな人
- 年齢を理由にやりたい事を諦めている人
- 年老いていく事に不安を感じている人
著者紹介
著者 やなせたかし
大正8年(1919年)東京都北区で生まれる。
アンパンマンの作者として有名な漫画家、絵本作家、詩人です。
幼少期に新聞社の特派員だった父を病気で失くし伯父の家に引き取られる。
東京工芸学校図案科(現在の千葉大学工学部デザイン学科)を卒業。
東京田辺製薬宣伝部に就職後、兵役へ。
終戦後、東京へ行き結婚。
三越に入社。グラフィックデザイナーをしながら漫画を描く。
6年後退職し漫画家に専念。
「手のひらを太陽に」を作詞。
詩集「愛のうた」創刊。
「やさしいライオン」毎日映画コンクール部門受賞。
「詩とメルヘン」創刊。
日本漫画家協会理事長。
平成25年(2013年)94歳で心不全の為、永眠される。
この本のおすすめのポイント
幼少期からの辛い体験を乗り越えている
やなせたかしさんが4歳の時に父親が仕事の派遣先で病気で亡くなられています。その後、弟は養子に引き取られ母と祖母と3人で暮らしていました。しかし、まもなく母親が再婚した為、弟が養子に行った家で一緒に住む事になります。心が折れそうになる程の辛い体験ですが、伯父夫婦の優しさと父親が残した本、絵を描くことで救われたと言われています。また、周囲からは優等生の弟と比較され、その事でコンプレックスを持ち辛い思いもされています。
中学生の時の辛かった心情を以下のように表現されています。
涙がこんなに出るのかと思うほど泣けたのですが、その原因が、父にあるのか、母にあるのか、伯父夫婦にあったのか、今も思い出せません。ただ、胸が潰れるように寂しかった。
「絶望の隣は希望です」より引用
家出をしようとしたり、線路に横たわってみたり、その時の精神状態はかなり危険だったと話されてます。楽しいはずの青春時代にそんなに辛い体験をされていたのかと思うと胸が痛くなります。ですが、そのような状況でもグレたりせず勉強も頑張られていたようです。
就職後しばらくして軍隊へ 5年間の軍隊生活を経験
軍隊では猛訓練とビンタの連続だったそうです。とにかく理不尽に殴られ、早く帰りたい、帰りたいと思っていたけれど、軍隊の中でできるだけ楽に暮らすためにはどうしたらいいか、軍隊といいう組織の中では自我を殺し、とにかく逆らわず、命令されるまま、言われる通りに行動すればいい。優秀でも最下位でもなく中位でいようと考えてから楽になった。というのだから適応力も流石ですね。
兵役後は筋肉もつき精神も鍛えられ逞しくなったそうです。そう考えると、厳しい環境で鍛えられる事は、必ずしも悪いことばかりではないような気が少しします。(戦争や暴力はいけませんが)戦争では現在の私たちの生活では考えられない過酷な体験をされています。
アンパンマンは不評だった
昭和48年(1973年)絵本にアンパンマンが登場する。ボロボロのつぎはぎだらけのマントを着て登場した。なぜかといえば、正義のために戦う人は、多分貧しくて新しいマントは買えない、と思ったからだそうです。編集部でも顔をしかめる人ばかりで「こんな絵本はこれっきりにしてください。」と言われ、作者のやなせさんも自信がなかったそうです。
顔を食べさせるアンパンマンに批判殺到
幼稚園の先生や出版社など、「ああいう絵本は、図書館に置くべきではない。」「顔を食べさせるなんてあまりにも酷すぎる。」大人たちから批判が殺到しました。私も初めてみた時はびっくりしたのを覚えています。だけど子どもたちに大人気で、更には作者がアンパンマンに込めた想いや信念を知った事で大人達も好きになっていったのだと思います。やなせさん曰く
「不評だろうと何だろうと、僕は少しもメゲませんでした。作者の僕自信がアンパンマンを深く愛していれば、いつか日が当たる時が来るだろう、そう信じていました。」
絶望の隣は希望です!より引用
やっぱり精神力も素晴らしいですね!普通はここで止めてしまうのではないでしょうか。人に何と言われても自分を信じて止めなかったからこそ大器晩成できたのですね。
アンパンマン誕生から15年後にようやくアニメ化のOKが出た
この時やなせさんはちょうど古希、70歳になったそうです。メゲない精神でついにここまで来られました。
最愛の妻に余命宣告
ここからは読んでいると辛くなりますが、妻への深い愛情を感じる章になっています。
七転八倒の病気人生
1998年にアンパンマンはテレビ放映10周年を迎え人気がうなぎ上りになった頃、やなせさんは80歳目前で老衰、体力は衰えたのに仕事量は増えて大変だったようです。その後も入退院を繰り返しながら仕事をされていました。ですが、食事にはかなり気を使われていて、体に良さそうなレシピの紹介もあります。ほかにも、オシャレ、運動など長寿の秘訣もたくさん書かれいるので参考になりますよ。
人生は「喜ばせごっこ」
後半の方は歳をとってからの生き方、心のあり方などが楽しく書かれています。
自分がしたことで、相手が心から笑ってくれたら、人はうれしくなるものです。もしも、哀しみに沈んでいる人がいて、その人に心を少しでも慰められ、笑顔を取り戻せたとしたら、「ああ、相手の役に立つことができた」と、思うことができる。それがひいては、自分にとって生きる力になります。
「絶望の隣は希望です」より引用
「笑って楽しむ気持ちがあれば、いくつになっても心を若々しく保つことができる」とも言われています。たしかに、日々の辛いことや不安な事は無くならないから、その事ばかりを考えてふさぎ込んで暮らすよりも、笑いに変えて楽しんで暮らす方がいいですよね。
まとめ
最終章は、諦めないでやり続けることの大切さ、運は自分で掴むものなどの哲学的な話から恥をかいた体験談など、沢山のためになる話をされています。人それぞれいろんな人生があって、3歳ぐらいで自分の道が見つかる人もいれば、60歳過ぎてから見つかる人もいる。また、「人生は一寸先は光だよ。途中でやめちゃったら終わりだよ。」という大先輩の言葉にも救われたそうです。そういえば、そういう話を聞いたことがありますよね。途中でやめるから、諦めるから夢が叶わないって。すぐそこに夢が来てるのに、その手前でやめてしまうから光のところに行けないと。いくつもの絶望を経験して来たやなせさんが語る希望の見つけ方。つらい時、苦しい時にこそ読みたくなる、希望をくれる一冊です。
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